EbelはなぜF.P. JourneとChanelの手に渡ったのか 老舗時計再建の読み方

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EbelはなぜF.P. JourneとChanelの手に渡ったのか 老舗時計再建の読み方

Movado GroupがスイスのEbel株式95%を6,650万米ドルで売却。F.P. Journe、Chanel、元De Bethune CEOが組む買い手の顔ぶれから、老舗ブランド再建の勝ち筋と企業が学べる事業整理の視点を読み解く。

ニュースの概要

米国の時計大手Movado Groupは、傘下のスイス時計ブランドEbel(エベル)の株式95%を、6,650万米ドルで売却する契約を結んだ。買い手は、独立系の名門F.P. Journeを率いるMontres Journe SAが主導する投資家グループである。参加者には、F.P. Journeの主要株主でもあるフランスの高級ブランドChanelと、De Bethuneの元最高経営責任者Pierre Jacques氏が名を連ねる。Ebelは20世紀初頭に創業した老舗だが、近年は存在感が薄れていた。大手グループの傘下で伸び悩んだ名門が、少量生産の職人系ブランドと高級ブランドの資本の手に渡る。今回の取引は、時計業界の再編の形が変わりつつあることを示している。

引用元: F.P. JourneとChanelがスイス時計ブランド、Ebelの株式95%を取得(Hodinkee)

分析・見解

評価額は約7,000万ドル、数字が語る再建案件の性格

6,650万米ドルで95%という条件から逆算すると、ブランド全体の値付けはおよそ7,000万米ドルになる。日本円にして100億円強である。世界の高級時計市場は年間数兆円規模だから、有名ブランドの買収としてはかなり小さな金額だ。Movadoは2004年にEbelを取得したが、20年以上かけても主力ブランドには育てきれなかった。今回の売却は、成長を待つより手放して本業に集中する判断が勝ったことを示している。

買い手の顔ぶれが示す、独立系と資本の新しい組み合わせ

F.P. Journeは、創業者のFrançois-Paul Journe氏が手がける少量生産の高級機で知られる。生産本数は多くないが、コレクターの評価は非常に高い。そこに、主要株主であるChanelが加わる。小さな工房の技術と、大きな資本や販売の力を、Ebelという既存の看板の上で組み合わせる試みと読める。さらに、De Bethuneで経営を経験したJacques氏が加わる点も見逃せない。技術志向のブランドを、数字で回せる経営者が必要だったということだろう。

Ebelに残る資産と、取り戻すべきもの

Ebelは1911年にスイスで創業した。1970年代後半のスポーツクラシックなど、丸みのある独特のデザインで一時代を築いた。この過去の物語は、新しいブランドがお金で買えない資産である。一方で現在の商品は、価格帯も個性もあいまいになっていた。再建の鍵は、歴史を前面に出しつつ、F.P. Journeが持つ精密な機械づくりの知見を、手の届く価格帯にどこまで落とし込めるかにある。中途半端な復刻に終わると、同じ道をたどり直すことになる。

大手が中堅ブランドを手放す流れ

Movadoは自社ブランドに加え、ファッション系ブランドの時計を製造販売する事業を大きな柱としている。この事業では、量と効率が成否を分ける。一方、Ebelのような歴史ブランドは、少量でも手間をかけて物語を磨く必要があり、経営の考え方が合いにくい。大手グループが傘下の時計ブランドを整理し、目的に合った持ち主に任せる動きは、これまでも繰り返されてきた。向き不向きの違う事業を一つの会社で抱え続けるより、合う持ち主に渡す方が、ブランドの価値は戻りやすい。

ビジネスへの影響

老舗ブランドの値付けから学ぶ、再建の相場観

約7,000万ドルという水準は、歴史ある名前だけで付く値段の目安になる。名前だけでは数千万ドル、そこに生産と販売の仕組みが加わって初めて大きな価値になる。自社のブランドや買収候補の価値を測るときは、ブランド名と稼ぐ仕組みを分けて見積もるとよい。名前の価値に支払う額と、仕組みづくりに必要な投資額を別々に計算すれば、高値づかみを避けやすくなる。

異業種の出資者を迎えるときの役割分担

今回の枠組みでは、技術を持つ事業者、資本を出す大手、経営を担う人材の三者が組んでいる。中小企業が提携先を探すときも同じで、お金だけの出資者より、販路や信用を持つ出資者の方が価値は高い。出資を受ける前に、誰が何を担当し、何を決める権利があるのかを文書で整理しておきたい。曖昧なまま始めると、意思決定が遅れ、せっかくの組み合わせが生きなくなる。

自社の事業整理に使える三つの問い

事業を手放すかどうかは、三つの問いで整理できる。第一に、その事業は本業と同じ考え方で運営できるか。第二に、自社より上手に育てられる持ち主はいるか。第三に、今手放せば価値が戻る余地は残っているか。製造業や食品関連の企業でも、長く続くが伸びない商品群を抱えているなら、この問いは有効だ。売却は撤退ではなく、価値を残すための選択肢の一つである。

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